リサイクル原料から作られたファッションアイテムは巷にかなり増えてきました。
2019年から、伊藤忠商事が商社の強みを生かして「RENU®」という服から服へのリサイクルプロジェクトを立ち上げました。
「RENU®」にはH&Mやアダストリアのブランドであるグローバルワーク(GLOBAL WORK)などが参加しています。
2020年からは、東レのリサイクルポリエステル「&+®」が展開され、JUNのADAM ET ROPÉなどに採用されています。
このようにここ数年で、リサイクル原料のアパレルメーカーへの採用が拡大しています。
これには、衣類の50%以上を占めるポリエステルの再生技術向上が大きく貢献していると言われています。


ポリエステルは熱可塑性樹脂といって、熱を加えると柔らかくなって液状になります。
ならば、いらなくなった製品を集めて加熱し、もう一度液状にしてからまた繊維に戻せばいいんじゃないの?と思うかもしれません。
しかし、高分子の世界はそんなに甘くはありません。
今やハイブランドやメガブランドも注目するサステナブルテキスタイルは、見た目や機能など様々な要求に対応できるからこそ日の目を見たといっても過言ではありません。
どんな技術革新があったのか、解説していきます。
PETはポリエステルの一種です
PETはポリエステルの一種で、1941年イギリスの会社が発明した特許技術を1953年にアメリカのデュポン社が買い取り工業化しました。
1957年に帝人と東レが技術導入して「テトロン」と名付けてブランド化しました。
安くて透明性が高く、耐熱性、強度、染色性や蒸散性などにも優れているため、今や衣料用繊維の約50%にPETが使われています。
また、もちろん私たちが良く知っているPETボトルなど飲料容器などにも多く使われています。
確かに、以前調べたら私の洋服の80%はポリエステルが入っています。
その中にはポリエステルとは思えないような風合いのものもあり、ポリエステル繊維がその太さや断面、撚りなどの異なる様々なバリエーションに対応できることを示しています。
ポリエステル繊維としてのリサイクルの難しさ
リサイクルの概念は昔からありました。
しかし、人々の意識が高まるまでに時間がかかり、さらに使用したものを回収するシステムを作るのにさらに時間がかかります。
また、リサイクルするコストがあまりにも高いと、これまた実現はかなり難しくなるため、リサイクルシステムがここまで確立するまでには様々な努力がありました。
ここではPETにおけるポリエステル繊維原料としてのリサイクル技術の変遷について説明します。
PETは2種類の分子を交互に鎖のように結合(重合)させて作られた高分子です。
しかし、その結合部分は水分や酸などと一緒に加熱すると切れやすいという特徴があります。
そのためPETボトルや古着などを回収して再加熱することで再生したリサイクルPETは、バージンPETに比べて鎖の長さが短いため粘度がより低下してしまいます。
粘度が低いと、強くてしなやかな繊維を作るのは難しくなってしまうので、バージンPETと同じように使うことができません。
このような理由で、リサイクルPETはその物性や外観の低さからこれまではその用途が限られていました。
バージンPETと同様の性能を発揮させるには、原料分子まで戻す(ケミカルリサイクル)か、あるいはリサイクルPETの改質(メカニカルリサイクル)を実現する必要があります。
ポリエステルの2大リサイクル技術
ケミカルリサイクルの「RENU®」
冒頭で紹介したケミカルリサイクルで高品質な再生PET繊維を作っているのは「RENU®」です。
伊藤忠商事とタッグを組んでいるのは帝人です。
帝人は高いケミカルリサイクル技術によって、リサイクル品から純度の高い原料分子を取り出すことに成功しました。
これによって、石油由来の原料分子を使わずにすみます。

メカニカルリサイクルの「&+®」
また、メカニカルリサイクルを採用しているのは「&+®」です。
東レはメカニカルリサイクル技術を有する協栄産業と組んで、ペットボトルから繊維を再生しています。
これは、先述したように切れてしまった分子を再縮合重合という技術で再び高分子化し、粘度をもとに戻すことで高品質な繊維原料を再生しています。

一口にリサイクルといっても色々な方法がありました。
また、私たちが気軽に買える製品として普及するために涙ぐましい努力があることを知ることができました。