Gucciとホースビット その着想を次のファッションに活かすなら 

装いの法則

こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。

ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
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このブログでもいくつかの記事で、わたしは乗馬をモチーフにしたファッションについて書いていますが、特にこの部分のことをホースビットと呼び、特に靴やバッグの装飾として用いられています。

乗馬とファッション

今さらローファー…と言わないで。そのルーツと最新モデルから魅力を語ろう!

この中でも触れているのですが、一番最初にこのホースビットをファッションに取り入れたのはグッチでした。

アメリカで流行していたローファーに着目し、ホースビットを装飾具としてとり付けることでカジュアルな印象のローファーに高級感と重厚感を取り入れた新しい紳士靴を1953年に販売し、瞬く間に人気になりました。

また、その2年後、ホースビットバッグを販売、ホースビットデザインはGucciを象徴するものとして男性だけでなく、社会進出し始めた女性も含めて広く認知されました。


というわけで今年2023年はGucciのホースビットローファー生誕70周年ということで、ミラノのアートスペース Spazio Maiocchiでエキジビジョンが開催されるそうです。

Gucciと乗馬との関係はこのサイトがすごく詳しくて勉強になりますが、もともと鞄に加え、馬具も取り扱っていて、貴族向けのアイテムを提供していたそうです。

やはりブランド発祥のストーリーを鑑みると、このホースビットは重要なモチーフであるといえます。

Gucci Web site より引用

また、ホースビットだけでなく、サドル(鞍)のような曲線や古いラインナップではブーツなどのモチーフも取り入れられていたようで、乗馬の高貴で勇敢なイメージをファッションに融合させ、ブランドの差別化を図っていきました。

Gucci乗馬用ラインナップより
サドルモチーフ
馬蹄モチーフ

このように何か別の業界のモチーフをファッションに取り込むことで、元の用途が何だったのかさえ忘れさせるような事例は、他にもあるのでしょうか?

少し考えてみました。

工具

馬具があるならば、工具だって…と思ったので、調べたところ……おっと、ありますね。

ROUILLE

イタリアのブランドで、フランス語で「錆」という意味だそうです(?)。

ビンテージのエンジン、バイク、車、時計などへの愛着を感じる、スパナやナットなどをモチーフとしたアクセサリーやファッションアイテムを販売しています。

ROUILLE Webサイトより引用

確かに私もホームセンターなどで、ナットとかワッシャーとかを見るたびに、これは指輪になるんじゃないかと思ったりしてたので至極納得です。

左からナット、平ワッシャー、弾性ワッシャーです

これは職人による手作りということでビンテージにこだわることでブランドイメージを確立しています。

それをあえて、例えばバッグの取っ手に使ってみたり、靴の装飾に使ってみたり社会的ムーブメントを起こすと、Gucciのようなブランドへの展開も….

電子機器

工具があるなら電子基盤などを活用した….と思ったので、調べたところ…..おおっと、ありますね。

HIRSCHELL

フランスのジュエリーブランドで2010年に起ちあがったようなのですが、Webサイトなどは今は閉じられているようです。

確かに基盤をモザイクのように活用するというアイディアは良いのですが、もはや材料になっているため、やはりブランドモチーフというような位置づけではありません。

普遍的なモチーフとして語り継がれるには?

例えば、分子構造やDNAなどの高分子構造、プリント基板をモチーフにしたアイテムはいくつも見つかります。

これはこれで、面白いとは思うのですが、普遍的な何かに落とし込むところまでに至っていません。

そう考えると、Gucciのホースビットデザインは、単なる装飾治具でありながらブランドの歴史にまつわる明確なストーリがあり、既存のアイテムに組み合わせることで新しい解釈を付与できたことが、評価されているといえます。

これにより、これまでは使われなかったシーンにもうまく調和するアイテムとして、ある特定のユーザーがそれを使用し始め、次第に様々なユーザーへと波及することで普遍性を獲得していったのではないかと思います。

ホースビットのようなデザインを凌駕する新しいモチーフって何だろう?

色々考えると面白いかもしれません。