息子の好きなキース・ヘリングの魅力を読み解いたら、ファッションの魅力にも通じるような気がした

装いの法則

こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。

ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
是非、私と一緒に、「あなたが本当に着ていて自信の持てるコーディネート」を探してみませんか?詳細はこちらの診断メニューをご覧ください。
またお申込みやご質問はこちらのお問い合わせからどうぞ。


***
私が学んだFPSSでは、基礎講座の最後に、実在の方をモデルにして、これまで学んできたすべての診断結果を元にファッションコーディネートを作り、それを5分間で発表するという授業があります。

私は、息子にモデルになってもらいました。

コーディネートを作成するにあたり、色々好きなテイストをヒアリングするのですが、彼が「いいね!」というデザインは私には「???」というものがかなり多く、戸惑いました。

しかし、私がいいなと思ったデザインは彼にはちょっと地味で、面白味がないのですが、彼が選んだアイテムは、なぜか不思議と馴染んでいるのでした。

そんなこんなで、私は彼の選ぶアイテムをベースに色やサイズ感などだけ少しアドバイスするといった感じで発表会用のコーディネートをまとめたのでした。

****

今回、久しぶりに一緒に街を歩いていて見つけたTシャツは彼のまさにドストライク(Bingo!)。

それが、キース・へリングでした。

どうみても私の好みではないのですが、確かに一度見たら絶対に忘れられないインパクトがあります。

若者のファッションに取り入れられているポップアートの魅力もちゃんと知っておきたいと思ったのでした。

キースヘリングと1980年代のポップアート

調べたらユニクロのTシャツになってました。見たことがある方もいるのではないでしょうか?

ユニクロHPより抜粋

アメリカのペンシルバニア州で生まれたポップアート、ストリートアートの先駆者ともいうべき画家だそうです(今回初めて顔を見ました)。

1980年にニューヨークの地下鉄に落書きアートという形で残された絵(サブウェイドローイングというらしいです)が有名になったのだそうです。

確かにこんな感じの落書き….ありますね。これはキース・ヘリングからインスパイアされたものなのかもしれません。

同時期に活躍したジャン=ミシェル・バスキアやアンディ・ウォーホルとも親交があったようですが、いずれのアーティストも正統派ではない、大衆的というか退廃的なアート作品を多く世に出したことで有名です。

バスキアのイラストTシャツ (GAP HPより抜粋)
アンディ・ウォーホルのイラストTシャツ
(ユニクロオンラインストアより抜粋)

いずれも大胆な構図やタッチ、色使いで対象物をわかりやすく描かれており、今でもTシャツやトレーナーなど、カジュアルなファッションアイテムに用いられています。

またポップな雰囲気と同時に、政治的・社会的な批判や皮肉も感じます。

これらのストリートアートの流れは、2000年代にバンクシーなどによる新しいアートの在り方を生み出すきっかけになっていったものと思われます。

バンクシーのお馴染みのイラストが描かれたTシャツ

キースヘリングの作品の魅力

とはいえ、これらの絵の魅力って何でしょう?

アート作品は第三者による解釈でわかったような気にもなるのですが、それを所有したいと思うとき、その作品のどこに魅力を感じたのかに、私は興味があります。

そんな中、彼の作品に魅了された方が創設した美術館「中村キース・ヘリング美術館」が山梨県にあるのを見つけました(オンラインショップもあります)。

創設者である中村和男さんは、第一三共株式会社の新薬開発をしていたそうですが1987年、米国出張中にキースヘリングの作品に出合い蒐集を始めたそうです。

彼が所蔵する300点を展示しているのがこの美術館とのこと….。

がぜん興味が出てきて調べたところこの動画につきあたりました。
(映画以外の動画を見るのがあまり得意ではないのに、中村さんがあんまり一生懸命話しているので、面白くて全部見てしまいました)。

まさにアイディアが有り余る人=中村さん


彼が最初の作品に出合った時、アーティストの名前も知らず、なぜか魅力を感じたとのこと。
今でも「なんだへたくそ」と思うこともあるんだそうですが、ないと寂しいんだそうです。

一方、蒐集の過程で集めた作品を次々と自分の会社に置いたら、嫌がる人もいたというエピソードも。
(だから美術館を作ったのだそうです)

彼の言葉を聞いていたら、理屈じゃないんだな という気になりました。

息子も、私が今回調べたキースヘリングのことを、ストリートアートの先駆者だとか云々、興奮気味にしゃべるわけなのですが、そこにはまったく興味がありません。

単純にこういう絵がなんとなく好きなんだそうです。

アートとファッション、なんとなく好きを認め合うと面白い

冒頭のFPSS発表会のお話に戻ります。

私は当初、同年代の女性にモデルをお願いする予定でしたが、急遽キャンセルになり、どうしようか焦っていたときに息子がしぶしぶモデルを引き受けてくれました。

とはいえ息子はファッションに全く興味がなく、ファッションを学びたての私はそれこそ「この私が率先して選んであげなければ!」と高校生男子の今どきファッション知識を得るべく、ティーン向けのファッション雑誌やインスタグラムを見てみたりして、キレイ目カジュアル路線で構想を練っていたのでした。

しかし、ヒアリングを進める間にその構想というか理想は、息子によってことごとく覆されていきました。

結果、彼らしいストリートカジュアルコーディネートを主体とした賑やかなプレゼン資料にまとめたことで、肩の力が抜けた楽しいプレゼンができました。

自分の発表会資料より抜粋しました

キース・ヘリングの、人をおちょくったような大胆なイラストがプリントされたTシャツも、「なんだそんなわけの分からないイラストは」と言わずに、「そういうのが好きなのね」と思ってみると、アートもファッションも面白くなってきます。