ピュアシルバーへの憧憬と挑戦

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こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。

ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
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SARARTH(サラース)というジュエリーブランドがピュアシルバーアクセサリーを販売しているという記事を見つけました

通常のシルバーアクセサリーはSV925の刻印があり、銀の含有量は92.5%です(ちなみに私の結婚指輪もこれです。)

残りの7.5%には主に銅やニッケルなどが用いられているそうです。

これには訳があって、銀は本来柔らかい金属であるため、変形しやすく加工も難しいのだそうです。

そこで他の金属を混ぜて合金を作らせることで、適度な硬度にしているそうです。

ただ、銅やニッケルは金属アレルギーを引き起こしやすい金属であり、シルバーアクセサリーを身に着けたくても、つけられない方が一定数いらっしゃるようです。

それを解決したのが、このピュアシルバーです。

SARARTH Webサイトより引用

これについて色々調べていたら、例のごとく面白くなってきましたので記事にしたいと思います。

ピュアシルバーのアクセサリーとしての魅力とは

資産価値の高さ

ピュアシルバーはSV999、すなわち純度99.9%以上の純銀です。

純銀というキーワードをググると、SV925の安いシルバーアクセサリーから不純物を除去して純銀のインゴット(いわゆる延べ棒というものですね)を作るというような動画などが出てきます。

動画を見ると、取り出された純銀は宝物のようにピカピカしていて、錬金術みたいでワクワクします。

つまりピュアシルバーは単純に銀として純度が高いため精錬する必要もなく、その分資産価値は高いといえます。

美しさ

実際SV925とSV999をアクセサリーという視点で見たとき、少なくとも私には特に輝きや美しさに差があるとは思えません。

また、銀製品は黒ずみやすいのですが、これはそもそも銀が空気中や私たちの体に含まれている硫黄と反応してしまうからであって、銀の純度に関わらず起きる現象です。

表面を磨けば銀本来の輝きを取り戻すことができます。

というわけで、ピュアシルバーアクセサリーとしての魅力を伝えるときに、純銀にしかない透明感とか輝きとか、美しさにおける特別感をあまりにも言及するとそれはいささか大げさで、あくまでもそれはイメージの問題なのではないかと思ってしまいます。

金属アレルギーの起きにくさ

上述したように、これまでのシルバーアクセサリーにはほぼアレルギーを引き起こしやすい銅やニッケルが含まれていたことを考えると、

SV999のシルバーアクセサリーであれば、金属アレルギーのリスクが低減します。

それが、一般の方にとってピュアシルバーアクセサリーの最大の魅力ではないかと思います。

日常的に使える

また、上述したように、純銀は形状維持さえままならないほど柔らかいという特性を有します。

したがって、このピュアシルバーはその物性の弱さを克服し、アクセサリーとして日常的に使えるようにしたところも特筆すべき点です。

私としてはこちらの方が興味があるので、ちょっと深堀りしていきましょう。

SV999のピュアシルバーアクセサリーは金属アレルギーに悩むデザイナーによって実現した

この情報の発信元は株式会社ミスティー・コレクションで、代表は宗形あやみさんという方ですが、この方自身がジュエリーデザイナーでもあります。

コンセプトの異なるいくつかのブランドを展開してアクセサリーを販売していますが、その中でピュアシルバーを取り扱っているのが、SARARTH(サラース)というブランドです。

どうやらご自身が金属アレルギーを有しており、職人とともにピュアシルバーの物性改善技術を進め、それを特許化(特許第6723678号:銀宝飾品及び銀宝飾品の製造方法)されているようです。

このサイトに詳しく記載があり、特許明細書からもこの技術内容を読み解くと

株式会社ミスティー・コレクション webサイトより引用
株式会社ミスティー・コレクション webサイトより引用

特許では、純銀の硬度を従来のSV925シルバーが有する硬度まで引き上げたときの結晶構造を規定し(つまり銀の原子がどのような位置関係で並んで結晶を作っているかを数値で規定)、そのために必要な処理方法について記載しています。

最も重要な技術は磁気バレル処理のようです。

彫金工具のネットストア | SUZUHOツール Webサイトより 磁気バレル研磨機 SPM-015Ⅱ

バレル処理というのは本来は研磨処理で、回転するバレル(樽)に研磨したいものと研磨剤を入れて水と共にグルグル回転させると、研磨剤が均一に衝突し、表面を洗浄、研磨する処理方法のことです。

この研磨剤が磁気を帯びているので、バレルを回転させることなく磁力の力で研磨剤を激しく懸濁させて研磨することができるため、磁気バレル処理と呼んでいるようです。

この処理を一定時間行うことで、表面の研磨だけでなく、純銀の表面の結晶構造が整い、硬度が高まることを発見したのだと思います。

次に重要な技術は銀メッキ処理です。

これも特筆すべき新しい技術ではないのですが、磁気バレル処理を施した後に行うことで、表面の凹凸がなくなり光沢性が向上し、かつ表面の硬度がさらに高まるとのことです。

おそらく磁気バレル処理にょって結晶構造が整った表面に、さらにメッキを施すことで平滑で規則正しい結晶層が形成されることに起因するのだと推察します。

ちなみに、よく、刃物職人などが鉄などを熱いうちにハンマーでたたいて焼きなましをする画像がありますが、これも金属の物性を改善するための作業です。

つまり、金属を溶かして型に流しただけでは、金属原子の配列はランダムで強度が高くありません。

これを原子がある程度流動できる温度で、外から力を加えることで、金属原子の隙間が縮まることで密度が高まり、電気的に安定な状態(結晶)が形成され、強靭な物性が得られるのです。

実際にこの焼きなましをすることで純銀アクセサリーを作っているデザイナーおよびブランドも見つけました。

これも味があって素敵です(私はこちらのデザインの方が好きかもしれない)。

しかし、こちらは職人さんの手によるまさに一点で、コストがかかります。

繊細で複雑なデザインのアクセサリーの場合は、一旦加工したアクセサリーの表面を上記の方法で結晶化させ、日常生活に耐えうる硬度にする上記方法が適しているのではないかと思います。

銀への執着の歴史

ピュアシルバーを調べたとき、銀は金よりも高価であった時期があるとの記述がありました。

なぜかというと、金のように直接人間が砂金(自然金というようです)のような形で存在を確認できれば良いのですが、自然銀という形で見つかることはほとんどなかったためだそうです。

そんなわけで銀が見つかったのは紀元前3000年ぐらいで、金の発見よりも1000-3000年後ということになっています。

また、往々にして金属は何らかの合金を形成するため、ピュアな形で得るには単一の金属へと精錬する技術が必要ですが、銀においてもそれらの技術が発達した結果、生産性は大きく向上しました。

その結果、銀は金よりも埋蔵量があることが分かり、銀の価値は金よりも下がっていきました。

銀や金、宝石などのキラキラ、ピカピカした物質に対する本能的な魅力や執着を人間がなぜ持つのかはわかりませんが、

首や耳にキラリと光るアクセサリーとしてシルバーは欠かせない存在であることは事実です。

このピュアシルバーが、金属アレルギーに悩む方への解決法となるといいなと思いました。