こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。
ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
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以前の記事にも取り上げた官公学生服が、DRC医薬が開発したハイドロ銀チタン®という原料を用いて中高生の制服と体操服を製品化するそうです。
2023年から3年で100校に導入することを目指すとのこと。
銀の消臭、抗菌効果などはこれまでも多くありましたが、このハイドロ銀チタンについても調べてみましょう。
花粉症の事実

私も子供の頃、まだ花粉症という名前はついていませんでしたが、春から夏にかけて鼻炎に悩まされていました。
大人になるにつれて、幸い私は症状が軽くなっていったのですが、それでも春先から夏にかけて目や鼻がかゆく、始終擦ってしまってヒリヒリしていたのを思い出します。
実は沖縄では花粉症に悩む人はほとんどいません。私も沖縄に移住してからは、まったく症状が出なくなりました。
しかし、本州では、春先には必ず花粉症の話題になるほど一般的になっていて、ひどい症状を聞くたびに小さい頃を思い出して気の毒になります。
春といえば、新年度が始まったり新しい環境に移って、普段よりも一層テンションを上げる必要があるのにも関わらず、花粉症のおかげでなんだか憂鬱になりますね。
実は花粉症については以下のようなことが分かっているそうです。
〇子どもの花粉症の発症率は、スギ花粉症だけで5〜9歳で30.1%、10〜19歳で49.5%に達している。
〇また、若年層の方がアレルギー反応が強いことから「辛い」と思う割合も大人に比べて高い。
〇花粉症により「生活の質(クオリティオブライフ)」が低下する。
中高生にとって、大事な新学期に花粉症のせいで集中力が低下したり、憂鬱になってしまうのはとても残念なことです。
ハイドロ銀チタン®の作用
ハイドロ銀チタン®は光触媒である酸化チタンに銀とハイドロキシアパタイトを複合化させたものだそうです。
酸化チタンは、東京大学の本多教授と藤嶋氏が最初に発見した技術で、1972年にNature誌に掲載されました。
酸化チタンが光を吸収することで活性化し、いわゆる活性酸素(ヒドロキシラジカルなど)と呼ばれる反応性の高い物質を放出するため、この活性酸素が接触した物質を酸化分解するというメカニズムです。
今では外壁などの塗料などにはごく一般的に用いられる原料になっていて、汚れが付きにくく、太陽の光で多少の汚れは分解することのできるペンキなどが広く普及しています。

© 2014 佐藤健太郎
銀イオンは抗菌作用があると言われていますが、これは銀イオン自体が微生物の細胞内に取り込まれることで微生物を死滅させ、抗菌性や消臭効果を実現するというメカニズムです。
この論文を読むと、今回の配合目的は、銀はむしろ酸化チタンの活性化をサポートする役割だと記載されています。
また、ハイドロキシアパタイトはリン酸カルシウムの一種で、歯や骨に多く含まれているため、生体親和性の高い原料であるといえます。
そしてアミノ酸,たんぱく質,脂質などを選択的に吸着する原料でもあり、またチタンや銀などの結晶構造を変える役割があります。
おそらく酸化チタンによる光分解はある程度時間がかかるため、まずはこれらの物質をハイドロキシアパタイトで吸着し、これを酸化チタンと銀で確実に分解するという原理で作られた原料なのではないかと考えます。
したがって、雑菌や悪臭などあらゆる有機物の分解に効果がある原料だといえますが、特にアレルギー物質=タンパク質ととらえ、花粉に含まれアレルギーを引き起こすたんぱく質を分解する機能に着目し花粉症対策を全面に謳うことで市場にインパクトを与える、かつ差別化を図ることを目的としているのではないかと思います。
2024年入学者向けの製品として販売
とはいえ、開発に3年もかかっています。この原料についてはすでにマスクなどへの適用例もあるため、今回、制服用生地に添加する方法や耐久性などの課題を解決するのに案外時間を要したのかもしれません。
生地に塗布するという方法でこの原料を表面コーティングするようですが、今後、2024年度の製品として、ブレザー、スラックス、スカート、体操服はジャージとシャツなどを販売していくようです。
実際には花粉症に直接効くものではないと思いますが、衣服の付着による室内汚染なども問題となっており、接触する機会をできるだけ減らすという点で一定の効果はあるかもしれません。