こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。
ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
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環境負担の少ない製品や技術について、このブログでもいくつかご紹介していますが、実際、環境負担って何でしょうか?
今現在の概念として環境負担を減らすという行動は以下のようなものがあります。
・石油の使用量を減らす(原料・燃料の削減)
・二酸化炭素の排出量を減らす(温室効果ガスの削減)
・汚染物質の排出を減らす(水・大気・土壌汚染の削減)
・生物多様性を維持する(過度の採取、開発の抑制)
とはいえ、これは結構難しい課題です。
そこで、実は、パーフェクトな技術というのはこれまであまりありませんでした。
しかし、今回、東レが100%植物由来PETを初めて製品化したそうです。
巷の印象としては、すでに色々環境にやさしいプラスチックなどが出回っているため、へぇ…そうなの?そんなに珍しいの?と驚かれるかもしれませんが、100%PETはやはり快挙です。
少し見てみましょう。
今回は、リサイクルについて暑苦しく語るセルフィッシュな前編で、後編でこの技術について詳しく説明します。
プラスチック開発と社会情勢
石油が沢山あった頃、石油原料からありとあらゆる合成物質が発見され、それらをつなぎ合わせて高分子化することで色々な特性を持つプラスチックや繊維が作られました。
高分子化学の研究者はこぞって、有機化学やシミュレーションの知識を駆使し、パズルを組み立てるかのように新しい化合物をつなげては新しい物性を見出しました。
しかし、ここ数十年前からは石油枯渇の懸念やごみ問題、環境汚染、温室効果ガスの増大など特に大量に作られている石油由来製品であるプラスチックによる弊害などが問題視され、高分子化学研究のトレンドは、さらに最先端の物性を追求するこれまでの延長線上だけでなく、環境に負担の少ない素材を追求する新たな流れができました。
・いかに石油を使わないでプラスチックを作れるか
・いかに二酸化炭素を増やさないようにプラスチックを作れるか
石油の使用量を減らす
石油は無限ではないということが分かっているので、いよいよ石油依存社会からの脱却について本腰を入れなくてはなりません。
でも、プラスチックは便利すぎて廃止することなど到底無理です。
そこで、初期の段階では、プラスチックの中に天然物質を加えることで、プラスチックの使用量、すなわち石油の使用量を減らした製品が環境にやさしいエコプラスチックとして多く開発されました。
例えば、プラスチックの中に木粉や植物粉を入れたものなどは最も簡単な技術です。
あるいは分子レベルにおいてプラスチックを構成している1つの原料だけ天然由来の原料であるというようなものも同様です。
しかし、それらは確かに石油の使用量は減りますが、石油由来の成分はそれを分解する生き物がいません。
もし放置すると、分解できる成分だけが分解された後、石油由来の成分はやはり同様に地球上に分解されずに蓄積されます。
そういう意味で、石油原料をまったく使用しないことの意義は大きいと思います。
二酸化炭素量をトータルで減らす
「カーボンニュートラル」とか「二酸化炭素排出量が実質ゼロ」とかいう言葉を聞いたことがありませんか?
昨今二酸化炭素量を減らす取り組みが世界的に試みられ、2015年にはパリ協定が定められました。
日本は2030年までに温室効果ガス排出量を46%削減(2013年比)、2050年までに排出量実質ゼロ、つまりカーボンニュートラルにするという目標を掲げています。
これについては植物以外のほとんどの生き物は呼吸するだけで二酸化炭素を排出しています。
しかしそれ以上に人間の経済活動として特に燃焼に関わる活動は二酸化炭素を短時間でかつ大量に排出します。
とはいえ、それらを一切禁止することなど到底無理です。
そこで、植物による二酸化炭素吸収能力を全面的に期待した考え方がカーボンニュートラルです。
極論を恐れずにプラスチックの分野に限ってざっくりと説明すると、一つにはプラスチックに植物原料を用いることで、植物原料が前もって二酸化炭素を吸収してくれているので、その後もし燃やして二酸化炭素を排出したとしてもトータルとして実質チャラ(ゼロ)でしょ。という理論です。
または、たとえ石油を使ってプラスチックを作ったとしても、代わりにどこかに植樹することでチャラにしていますよ。とかいう理論もあります。
もちろん植物の生育スピードや資源としての利用可能性を考えた上で経済活動とのバランスを考えなければ、机上の空論になってしまう危険性も十分にありますが、現状はこの考え方を意識しながら、これまでの意識を変えていく必要はあると思っています。
そういう意味では、これまで石油でしか作れなかったプラスチックを100%植物から作れるようにして、さらに、それを製品として実際に流通させることは非常に意義のあるものだと思います。
100%の難しさをクリアしたことがすごい
今回の取り組みのすばらしいところは「製品化した」ということです。
研究レベルではすでに多くの実績はありました。
しかし、原料レベルにおいて大量に供給可能な植物を原料として確保した点、これらを実際に大量生産して、品質を保証した上で製品として流通させた点、そういう意味でカーボンニュートラルをある程度説明できているであろう点など、100%を実現させようとすると、どれかが必ず難しくなりますが、それを見事実現させました。
たぶん、これはあらゆる分野の人間が関わることで、全社で取り組んだ結果なのだろうな…と思ってうらやましさを感じます。
さて、前編はこのぐらいにして、後編でこの技術について詳しく説明します。