こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。
ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
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私の記念すべきブログ第一弾で記事にした蓄熱性素材CWO®住友金属鉱山㈱が発明した六方晶タングステンブロンズのナノ材)がついにクラウドファンディング上で製品に採用されていました!
なんか嬉しい…。
新製品のチャレンジ販売で有名なクラウドファンディングプラットフォームであるmakuakeで、この度、カイハラというメーカーから「HINATAダウンジャケット」が販売されました。
素材がこうやって製品に使われていくのを見ると、本当に同じ開発者として刺激を受けます。
せっかくなので、詳しく覗いてみます!
カイハラとは
カイハラとは広島県に本社を有し、1893年に創業、1970年代からはデニムの製造技術を確立し、製造および自ら開発と販売も行っている企業です。
現在、カイハラデニムの国内シェアは約50%だそうです。ご存じでしたか?
シェア50%というのはすごいことです。
この記事にも書きましたが、会社のロゴといい、創業年といい、広島県の繊維業は戦前から続く老舗が多い印象があり、このカイハラも沿革を見るだけで、戦前から戦後の激動を生き抜いた力強さを感じます。

高価なCWO®の導入は難航するも、可能性を信じた開発者の強い想いが老舗を動かした
今回のプロジェクトの開発秘話がmakuakeのマガジンに掲載されています。
ジーンズの作り方やカイハラの会社についても同時に書かれていますので、是非行ってみると面白いと思いますが、まず、ダウンジャケット自体がこの会社では初めて挑戦するアイテムだったようで、まず、この企画を社内で提案した際には、かなりの難色を示されたとのことです。
さらに、これまで扱ったことがないほど高価な薬剤であるCWO®を取り扱うことにもかなりの抵抗感があったようです。
現場で原料を無駄にせず、かつ安全にラインを稼働させて製品を確実に生産しなければならない工場長の言葉尻から、その時の難しい状況が目に浮かびます。
一方、この企画を勧めた開発リーダーの方がこの素材の可能性についてこのように述べています。
「大きな摩擦があり、もうやれないというくらいの反発もあったのですが、とにかくお願いをし続けて……。僕がもういいやと諦めたら、そこで終わってしまう話。なんとか実現したい、その想いだけはブラさないようにと」(上記リンク先の原文をそのまま引用しています)
もう…わかりすぎます。この想い….。
自分がいいと思ったものでも、社内での反発がものすごかった時にどこまで粘れるか….。
それぞれの立場があるので、すべての意見は正しいと思うからこそ、果たして自分の主張は正しかったのだろうかという思いが交錯してめげそうになってしまいます。
しかし、何とか実現したいという思いで「お願い」したんですね。
そうなんです….こういう時に、市場性データや技術論や統計をいくら持ち出しても、やはり人は説得できないものだったりします。
なんとなく、ここを見ているだけで、共感ばかりしてしまいます。
しかし、この粘りは、自身が半信半疑であったにも関わらずやはりCWO®の良さを実感したからだと思います。
技術に裏打ちされた本物の効果を自ら実感したことで、頑張れたんですね。

ダウンジャケットの需要は全世界
今回CWO®を配合した生地を「HINATA」と呼んでいるようですが、CWO®による発熱機能に加え、ストレッチ性を有し、最薄、最軽量の生地だそうです。
経糸に再生セルロースであるテンセルを用い、緯糸にPBTとPETのポリマーを2つのノズルから紡糸して複合化させたコンジュゲート糸を使っています。
太陽光にあたることで20℃以上発熱します。
理論上は外気温5℃であっても室温程度まで暖かくなることになりますが、試験結果から考えるに、普通のダウンジャケットに比べておそらくプラス5-10℃程度の体感が得られるのではないかと思います。

さらに、CWO®配合により内部のダウン量を減らすことにもつながり、軽量化とシャープなシルエットが実現したそうです。
黒とダークネイビーで、XSからXLまでの5サイズ展開です。価格もクラウドファンディングでの試みということもあり、超早割を利用すれば39900円で入手可能です。


残念ながら、私の住む沖縄ではこれほど暖かいダウンジャケットの必要性は低いのですが、これは本州にいたら、きっと買うだろうなと思います。
また、日本だけではなく、海外においてもきっと売れると思いました。
そして、もう一声…第一弾のブログで、このCWO®の魅力として、既存技術であるグラファイトのように、生地に配合することによって色が黒くなってしまうことに触れ、CWO®は「素材の色を損なわない」点を第一に挙げていました。
今回、この素材に着目したカイハラは、デニムメーカーであり、紺と黒がこだわりだったのかもしれませんが、できれば今後カラフルなダウンジャケットに採用されることを期待しています。
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