体温でフィットする靴~28℃で柔らかくなってしまうプラスチックで実現~

プラスチック

こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。

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株式会社ワコールが体温でフィットする靴「SOPIVA(ソピバ)」を販売したそうです。

久々の新素材に関する記事です。

意気揚々と調べました。

体温でフィットする靴「SOPIVA(ソピバ)」

ところで ワコールというのは下着の会社では…? 靴も売っていたんですね。

この「SOPIVA」はサクセスウォークという2004年から開始されたワコールの「働く女性のための靴」だそうです。

これはこれで面白いので、特設サイトも是非覗いてみてください。

秋冬モデルということで、パンプスではないのですが、確かに私も特にパンプスにおける悩みはつきず、足の形にフィットしてくれたらどんなにいいかと思います。

ワコール「SOPIVA」動画より引用

その秘密は体温でやわらかくなる樹脂「HUMOFIT®」(ヒューモフィット)」

「SOPIVA」は靴自体の形や中敷きなどにも工夫が凝らされているようですが、足の甲の部分(アッパー)に「HUMOFIT®」と呼ばれる三井化学株式会社のシートが用いられているそうです。

この素材が足に合わせて伸び縮みすることで、足の幅や甲にフィットし歩きやすさを実現し、足のかたちの左右差、レッグウェアの厚みによるフィット感の違い、朝夕での足のむくみによるサイズの変化などにも対応できるとのことでした。

以前「ガイアの夜明け」でも紹介されていたようなのですが、私の家にはテレビがないので見ていません。もしかして皆さんご存じだったりして…。

先の記事にもありますが、私たちの身の回りのプラスチック製品のほとんどは熱可塑性プラスチックというもので、熱を加えるとやわらかくなります。

このやわらかくなる温度のことを「ガラス転移温度」と呼びます。

言葉の意味から厳密にいうと、やわらかい状態のプラスチックが冷え固まってガラスのような状態になるときの温度のことを指しますが、この温度を超えるとプラスチックが柔らかくなりゴムのような状態になります。

「HUMOFIT®」はポリオレフィン系共重合体で、ガラス転移温度は約28℃だそうです。(チョコレートと同じだ…)

構造の中に柔軟性の高い構造があるのですが、これがあることで高分子として整列することが難しく、固化させることが難しいとされてきました。

これを触媒技術などで、うまく構造を制御し、高分子化に成功したようです。

すなわち、ガラス転移温度が体温よりも低いので、体に触れると、シートが柔らかくなって、体に馴染むということです。

作った当初は使い道が見いだせなかったそうですが、市場調査や公開コンペティションなどを経て、アパレル、シューズ、シート、ウェアラブル、医療・ヘルスケア、スポーツ用品などの色々な製品に用いられるようになったそうです。

多くの人に意見を聞くことで、幅広い用途を見出した良い事例

HUMOFIT®」のサイトには様々な製品例が挙げられていて、例えば、同じくワコールからは靴よりも前に、産後用のブラジャーが開発されています。また、マスクの耳掛けや、帽子などもありました。

いわゆる付箋紙に用いられている糊が、すぐ剥がれることで当初開発元である3Mではお蔵入りになりそうな成果だったとのこと。

今回もそれに似たような事例ではありますが、結果、こんなに多くの製品に採用されるというのは面白いことだと思いました。

外部に広くアイディアを求めたことが功を奏したといえます。

ワコールHPより引用
press HPより引用