こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。
ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
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男性用のスーツを着たい女性の方に向けたサービスが増えつつあるようです。
女性用のスーツもバリエーションが多く、そこまで選択肢がないわけではないような気もしますが、ビジネスとカジュアルとの境目が曖昧であるようにも思います。
そんな中、特にビジネス用途で、男性向けのシルエットのスーツを着たいという要望が高まっているようで、男性用のオーダースーツを女性向けにも対応する動きがあります。
今回は、それらのサービスを展開している2社を紹介します。
「メンズスーツを女性が着る」ということはどういうことか
男性用スーツの細かいルールに従う
男性用スーツにはイギリス発祥の昔ながらの細かいルールがあり、これを安易に省略してしまうとビジネススーツとしては成り立たなくなります。
したがって、まずはルールありきという前提があります。
一方、女性用スーツにははそのような明確なルールはほとんどありません。
そのため、パンツの形や長さ、袖や丈の長さ、襟の形などは男性用よりも非常に多くのバリエーションがあります。
そんな中、女性が男性用スーツを着るということは、あえて男性用の縛りを自ら受け入れるということにもなります。
できるだけ正統な流れを汲んだスーツを着てみたいという好奇心とか憧れとか、男性社会への親和性を心理的に望んでいるとかがモチベーションになるのかもしれません。
この要望に応えるには、例えば、男性用スーツにしかないデザイン、あるいは男性用スーツとして認められているデザインを、女性用スーツにあえて取り入れることで比較的容易に達成できそうです。
男性用スーツのシルエットに寄せる
女性の体は曲線的であり、男性の体は直線的かつ平面的です。
したがって、そもそもパンツなどは男性用のシルエットをそのまま女性用に適用することは難しそうです。
したがって、これを女性がきれいに(体の特徴を活かして)着こなすことができるように補正をしたものが女性用スーツであるといえます。
しかし補正をすればするほど女性は女性らしく見え、男性のシルエットからどんどん遠ざかっていきます。
男性用スーツのシルエットを女性に適用するには、可能な限り男性用の型紙を用い、女性の体型を考慮した補正を最低限(一般の社会生活において、バランスが極度におかしくならない程度に)に抑えることで達成しなければなりません。
これは提供側にとっても、購入側にとってもかなりハードルの高い試みだと思います。
提供側にとっては、結局女性用の特別な補正による手間がかかることになり、購入する女性にとっても男性用シルエットを確保しつつスタイルを良く見せるために、男性用型紙のどの部分を補正し、どの部分を残すのかについて、トレードオフの関係になることを念頭に入れる必要があります。
FABRIC TOKYO
FABRIC TOKYOは「Fit Your Life」をコンセプトに、デジタル世代をターゲットとした、オーダーメイドのアパレルブランドだそうです。
2018年ごろから男性用オーダーメイドスーツを女性も着たいという要望があり、2019年から「Men’s Suit for ALL GENDER」として性別を問わずメンズパターンのオーダースーツを注文できる期間限定イベントを毎年開催しているそうです。
今回は、渋谷MODIの店舗だけでなく、横浜、名古屋、神戸、福岡の4店舗で同時開催するとのこと。
メンズパターンをベースにした作り
女性側において
・既製服が体型に合わない
・体のラインが強調されるレディーススーツに違和感や抵抗がある
・なんとなく好みじゃない
という方に向けたサービスという説明があります。
フルオーダーというわけではなく、約200種類の既存パターンの中からサイズに近いものを選び、微調整や体型別の補正をするそうです。
ただし、男性用の型紙を活かした直線的なシルエットを活かしたサイズ感をあくまでも楽しんでほしいということで、必ずしも体型にフィットしない可能性、3ピースの対応は不可、体型によってはできないオーダーもあることなどが注意事項として記載されています。
インスタグラムで多くのクリップを見ることができますが、ジャケットは総じて男性用スーツのようにお尻が隠れる程度までの長さがあり、パンツに関してはテーパード、ストレート、短めなどのパターンを用意して対応しているようです。

GINZA Global Style
GINZA Global Styleは「ENJOY ORDER!」をコンセプトとして全ての人にオーダーメイドを楽しんでもらうことを目的としたオーダーメイドスーツのアパレルブランドだそうです。
FABRIC TOKYOのように全面的に女性向け男性用スーツのオーダーメイドを打ち出してはいませんが、より柔軟な対応ができるようです。(ただし価格はFABRIC TOKYOよりも1-2万円程度高いです)
メンズパターン・レディースパターンそれぞれをベースにした作り
ここでは上記2つのオーダーに対応していると説明がありました。
(1)レディース用パターンをベースにする
女性用スーツを基本としてメンズライクになるようにサイズ感を調整するのだそうです。
具体的には、
・ジャケットは2つボタンタイプを選ぶ
・パンツはウエストやヒップ部分もゆとり感をしっかり持たせる
・ジャケットにステッチを入れる
・ジャケットの着丈を長くする
・ジャケットの袖の長さを短くする
ことでメンズライクに寄せることができるそうです。
ベースが女性向けなので、ボタンの位置は左側にあり、シルエットに違和感が少ないことをメリットに打ち出しています。
(2)メンズ用パターンをベースにする
メンズ用パターンをベースとしたオーダーで、肩幅やウエストなどを合わせることで、出来る限り身体のシルエットを拾いたくない方、ベストも作って3ピースにしたい方にはこちらがおすすめだそうです。
ポイントとしてはジャケットの重厚さを軽減するために
・肩パットや芯地を極力省く
などの提案があります。
ただし、ここでもやはり、あくまでもメンズパターンであるため、細部の調整が完全には出来ない場合もあるという注意書きがあります。

スーツの概念を変えるジェンダーレスの時代
スーツは男性社会における象徴的・概念的な服装で、男性の目線から形成された特殊な服です。
これを女性も含めて誰もが着れるようにするためには、その特殊性をある意味では撤廃し、また別に意味では保存する必要がでてきます。
原理主義者から見れば、それはもやはスーツではないと言われてしまうかもしれません。
しかし、この記事ではありませんが、服装は社会的思想や時代背景に大きく左右され、時には行きつ戻りつを繰り返しながら派生していくものなのだと思います。
私たちが今、格式が高いと考えている服装も、本当にそれが完成形だと誰がいえるのでしょうか?
個人的にはスーツやネクタイなどの概念は、今後どんどん変遷していくのではないかと思っています。