ブランドに物語を乗せて~MIDTOWN KRAKENS(ミッドタウン・クラーゲンズ)の進化を楽しむ~

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こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。

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元記事は2022年08月15日の繊研新聞です。

「アシックスジャパンが架空のストリートバスケットボールチーム「ミッドタウン・クラーケンズ」が着用するバスケットボールのアパレルコレクションを販売」

ちょっと何を言っているのか意味がよくわからなくて、何回も読み返しました。

アシックスが、バスケットボールの新しいアパレルブランドを展開したそうなのですが、それは、架空のストリートバスケットボールチーム「ミッドタウン・クラーケンズ」が着用しているという設定らしです。

ん??架空のチーム?

この戦略って正しいのでしょうか?  紹介しがてら、ちょっと考えてみます。

誰も知らない架空の組織をモデルにしたブランドの訴求力とは

すでにそのスポーツに携わっている方であれば、あるいは一般の方の誰もが知っているスーパースター選手や、それらの選手が所属するメジャーチームをモチーフとして、すでにあるチームエンブレムや選手を象徴するアイコン(シグネチャーロゴといいます)やサイン、背番号などをアイテムに入れたりすることはよくあると思います。

ユーザーはもちろんこれらの選手やチームが好きだから、それを購入するというわかりやすい動機と直結した販売戦略です。

これはMBAのマイケルジョーダンのシグネチャーアイコン

しかし、今回の戦略はメーカーサイドからの提案で、かつ架空の物語です。

スター選手は起用されているようですが、知名度がまだ少なく、もともとある市場から派生したというよりも自ら市場を作ろうとしている戦略に思えます。

それには、初めからストーリーをすべて説明してしまうのではなく、ポテンシャルを秘めた謎のチームの背景や成長を一緒に楽しむという形でユーザー参加型のブランディングの方が面白いと考えたのではないかと思います。

ストリートバスケットボールチームを新たにブランディング

まずは、このコンセプトを紹介します。

アシックスの特設サイトを見ると、確かにアメコミのようなタッチで描かれた8人の選手と、写真(有名な国内のストリートボーラーの方たちのようです)がありますが、ニックネームがあるだけで、他の情報は何も書かれていません。



そもそもストリートバスケットというのが何なのかわからないのですが、Wikipediaには、1on1あるいは3on3とも呼ばれるのハーフコート(コートが半分で、リングが1つ)の形態で行われるバスケットだそです。

あ。知ってる。

もともとはストリートというだけあって、屋外において少人数で気軽に楽しめるバスケットボールだったのが、徐々に広まっていったようです。

ヒップポップなどを流しながらMCが試合展開を進め、華麗なテクニックを披露するエンターテインメントとしての要素もありつつ、2020年からは夏季オリンピックバスケットボールの正式種目に採用されたそうです。

失礼ながら、私はほとんど知らないのですが、実際にまだ日本では馴染みの薄いスポーツだそうで、bjリーグ(日本プロバスケットボールリーグ)の選手が流動的に参加したり、国内最高峰のストリートボーラーを集め、“個人最強”を決めるという、まるでK1-グランプリ(格闘技)のようなイベントなどもして盛り上げようとしているそうです。

なんとなく、このストリートボールの可能性に広がりが見えてきたような気がします。

謎のストリートボーラー集団「MIDTOWN KRAKENS」

サイトによると、「MIDTOWN KRAKENS」は突出した能力と類を見ない個性を爆発させ前人未到の高みを目指す謎のストリートボーラー集団だそうで、アシックスと共に「バスケットボール界に新たな風を吹かせたい」という野望を持っているそうです。

そして、このブランドのエンブレムとして、北欧で船に巻き付いて船を沈めるというタコの怪物「クラーケン」をモチーフにしています。

アシックス創業時、初めて開発したバスケットボールシューズがタコの吸盤をヒントにしたという逸話がもとになっているようですが、

クラーケンは人を襲う怪物ではなく、「大海原へ勇敢に立ち向かう進化と革命の象徴」としてとらえているとのことですが、この怪物のおどろおどろしさや、フォントの形状など、色味が、ストリートファッションブランドのイメージにぴったりだといえます。

ファッションアイテム

白、黒、黄色、深い緑、青、黒、グレーなどを使った比較的シンプルなアイテム展開となっていて、男女ともとっつきやすいデザインだといえます。

今後の展開

今後、この謎のチームの詳細を明らかにしつつ、物語を展開しながら、試合で使えるアイテムや、トレーニングウェアなどを幅広い年齢層に向けて拡大していくそうです。

このブランドに込めたアシックスの想い

テクニカルでありながら、エンターテインメント要素もあるストリートバスケットに新たな層を巻き込み、まったく新しい市場を作りたいという開拓精神が感じられた今回の企画でした。

「大海原へ勇敢に立ち向かう進化と革命の象徴」というのは、まさにアシックス自身の戦略を示しているともいえます。

先述したように、ユニセックスなストリートファッションブランドとしても、潜在的な面白さがあります。

これがどのようなムーブメントを引き起こすのか、今後が楽しみです。