こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。
ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
是非、私と一緒に、「あなたが本当に着ていて自信の持てるコーディネート」を探してみませんか?
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FPSSではいつも授業の一環として、「何か目的を持ったコーディネートを着て授業に参加する」というものがあります。
授業の最初にそのコーディネートを皆に見せながら、そのコーディネートの説明をして、なぜそのアイテムを選んだのかを発表します。
これが、私には結構大変なことで、毎回、少ないワードローブから何とかひねり出して着ていたものですが、ある時同期の方がきれいな色のシャツを合わせて発表していたとき、最後に先生が「ちょっと、そのシャツの「襟を抜いて」みてください」と仰いました。
その方がそのように直してみると、小柄なその方に少し大きめのシャツが少しフィットしたように見えて、よりすっきり可愛らしくなりました。
「アイテムの選定だけでなく、着こなしも工夫することが重要ですね」と先生は仰いましたが、これは体型診断の授業を受けた際に、ある程度セオリーとして理解していたのですが、実際にその変化を見て、まさにそうだなぁと実感したのを覚えています。
その後、この「襟を抜く」という提案は、現在実施しているモニターの方にも何回かしているのです。その時には、いつも同期の彼女の姿が目に浮かび、きっともっときれいに着こなせるはず。と思っていました。
今回、私は珍しく新しいトップスをいくつか購入しました。
それは私が苦手とするオーバーサイズのトップスでしたが、色が、これまであまり持っていなかった赤系統のもので、パーソナルカラーがオータムの私にも顔映りが良かったので、試着室で散々迷っていました。
しかしふと思い立ち、襟を少し抜いてみたら、「おお!」これならなんとか着ることができそうだ。早速買い求めました。
その夜、私は購入したトップスに加え、これまで裾を出すとなんとなくだらしなくなり、裾を入れると真面目過ぎるか、入れられるボトムスが少ないかで、なかなか持て余していたトップスについても、今回購入したものと同様に襟を抜いて着てみました。
その結果、かなりの確率で、着こなすことができることに気づきました。
前置きが長くなってしまいましたが、オシャレな人にとっては、「今更ですか?!」と思われるこの襟の抜くという着方について、考察してみたいと思います。
これらの事例を参考にしていただき、是非、あなたもしっくりいかないシャツなどの「襟を抜いて」再度着てみてください。案外、いける!と思っていただければ、幸いです。
襟の抜くというのは何だ
和装では一般的概念になっている
ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、これは着物の着方の一つで、
襟(本来、和装では襟を「衿」と表記するようなのですが、ここでは襟で統一します)の後ろの部分を引き、うなじが見えるようにすることです。「衣紋抜き」とも言います。
襟足をスッキリ見せる効果がありますが、一説では、江戸の中期に流行した髷髪は、たぼが長かったたことから、鬢付け油が襟につかないようにするためだったそうです。

フォーマルな場では少し多めに抜き、普段着では動きやすいように少し少なめに抜くのだそうです。
また、子供はよく動き回るため、年配の方は腰が曲がってくるため襟を抜かず、それ以外の方は襟を抜くとのこと…。というわけで、ほとんどの成人(女性)は襟を抜くという着こなしの工夫は有効です。
体型においては、ややふくよかな方は多めに、細めの方は少なめにとのこと。確かに首の細さと長さが強調されそうなので、この理論に納得です。
ただ、上述したように女性らしさが強調されるため、やりすぎると艶っぽくなりすぎるとのこと、花魁のような粋筋の女性は特に多めに抜いていたそうなので、一般女性はそのギリギリのところを攻めていたにちがいありません。

というわけで、やはり着物の世界もこのような細かい着こなしがニュアンスどころで、自分の体型やTPOに合わせて、この「抜き加減」を調節するようですね..。
「とにかく何回も着て良い塩梅を見つけるべし」という指南がありました。
また、きれいに抜けていると見た目が美しいだけでなく、着崩れも少なくなるそうです。
着物は、一度でも着たことがある方はご存じかと思いますが、着物は着崩れするものだという前提で作られているのかどうかわかりませんが、とにかく中にあらゆる「紐」が通っています。
こんなこと、絶対江戸時代にはやってないよね?と思いながら、着付けの方にひたすら身をゆだねる自分がいたことを覚えていますが、着付けの達人であれば、着物一枚をさらりと羽織って1分で外出できるのでしょうか…?いまだに疑問です。
というわけで、この襟抜き問題においても、「衣紋抜き」というパーツがあります。ずっと引っ張ることで、だんだん襟が詰まってくる(着崩れる)のを防ぐのですね。

もしかすると、江戸時代などでも、「あの人は粋だ」「あの人はなんとなく野暮ったい」というときに、この襟の抜き加減などの違いもあったかもしれません。
洋装でもオシャレな人にとっては常識?
皆さん、意識しているかどうかわかりませんが、Webスナップを見るとオシャレな人はほぼ襟を抜いています。いわゆる、これが「こなれ感」というものでしょうか?
通販サイトでも、思わずモデルさんが着こなす着画像を見て「素敵なシャツ..」と思って購入しますが、デフォルトではあくまで普通のシャツです。
自宅に届いたら自分でこのように着こなせなければ、やっぱり「あれ?なんか思った感じと違う?」という結果になってしまいます。

実際にやってみて考えてみる
冒頭で述べた赤いシャツを用いて、恐縮ながら私自身で実際に試しました。
襟はなく、キーネックになっていますが、デニムのタイトスカートに合わせた場合のシルエットの違いが、私のような例でも良くわかるのではないかと思います。
お恥ずかしながら、私は今まで襟を抜いてきたことがなかったので、大概、裾をどうすれば良いかわからず、このようなビッグシルエットのシャツはこれまで倦厭してきました。
また、店員さんから「前だけボトムスに入れてもいいんですよ。」とアドバイスを受けても、襟を抜かずにそれをやっていたので、イマイチおかしなことになっていました。
今は、襟を少し抜いて、そうすると前の裾部分が少し上に上がって分量が減るので、それを少しボトムスに入れて後ろは自然に出して着ています。
イマイチおかしなこと…というのは、余りある裾をボトムスにゴソゴソ出したり入れたりするのがどうも不自然で違和感があったのですが、ちょっと襟を抜くだけで「小細工をしてますよ感」がかなり低減し、精神衛生上もとても良かったのです。

皆さんも是非
オシャレな人にとっては、「なんだこりゃ記事」かもしれず、大変恐縮なのですが、私は今回、結構この「襟を抜く」という着方について真剣に考えたことで、自分なりに深く納得しました。
皆さんもいつものシャツを着るときに、鏡に向かって少し襟を後ろに引っ張ってみてください。
トップスが若干タイトになり、ストンとなりがちなシャツのシルエットにほんの少しニュアンスが出て、ちょっとイイ感じになることが実感できれば何よりです。