植物由来のエンジニアリングプラスチック「DURABIO™(デュラビオ)」

プラスチック

こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。

ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
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エンジニアリングプラスチック(略してエンプラ)というものをご存じですか?

これは特に強度が高かったり、耐熱性があったり、寸法安定性(収縮や膨張などが起きにくいこと)が高かったりして、工業製品などにも使うことのできる特殊なプラスチックのことを指します。

たとえば、戦闘機の防弾ガラスなどにも使われたり、家電製品の歯車などに用いられています。

専門的には100℃以上の環境に長時間曝されても、49MPa以上の引っ張り強度と2.5GPa以上の曲げ弾性率を持ったものという説明になっています。

そんな高性能なプラスチックも植物原料からできてしまうのは驚きです。

今回は、三菱ケミカルグループの植物由来のエンジニアリングプラスチック「デュラビオ」について調べてみました。

バイオエンプラ DURABIO™(デュラビオ)

もともと三菱ケミカルグループはエンプラを得意とする企業です。

しかし、昨今のバイオプラスチック開発の活性化の影響を受け、環境負荷に対する対応に迫られたこと

さらに現在5大エンプラの一つで、その耐熱性と強度、透明性の高さからガラスの代わりに用いられるポリカーボネート(PC)樹脂が、唯一光学特性に課題があった(屈折率が一定でなく、色や明るさ見え方がガラスに比べて均一ではない)ことから、

主要原料であるビスフェノールAを超える新たな原料として植物由来の「イソソルバイド」に白羽の矢が立ちました。

イソソルバイドはトウモロコシや小麦など植物由来のデンプンや糖から作られる化合物で、利尿薬などの医薬品の原料でもありますが、ビスフェノールAに匹敵する強固な骨格を持っていて、光学特性にも優れていることがわかりました。

ただ、単独で高分子化しても脆くて柔軟性に乏しかったため、コンピュータシミュレーションにより、他の原料とともに高分子化することで、「DURABIO™」が誕生しました。

三菱ケミカルHPより引用

「DURABIO™」はPCに比べて以下の優位性があります。

・透明で光学特性にも優れ、ガラスの代替品として使える
・耐久性に優れ、紫外線による黄変がない
・延性を示し、フィルム化も可能である
・表面に傷が付きにくい
・表面に付着した微生物をはじき、水などで洗い流せる撥菌性がある
・石油原料を削減できる
・反応温度が低く、エネルギーが節減できる


ただし、残念ながら他の樹脂で高分子化していることから生分解性はありません。

すでにいくつかの製品に採用されています

カシオ計算機:アウトドア腕時計「プロトレックPRG-340」

用いられているのはベゼルという腕時計のフェイス部分にあたる文字盤外周の部位。
ちなみに、この製品は回転ベゼル、ケース、裏蓋、ソフトウレタンバンドに、各種バイオマスプラスチックを採用しています。

カシオHPより引用 29,800円です

パイロット:「アクロボールT、フリクションボールノック05」

スズキ:S-CROSS

フロントグリル(車の全面にある網や格子状の部分)に採用されています。

トヨタ自動車:燃料電池自動車「MIRAI」

MIRAIは水素で発電した電気で走る燃料電池自動車で、環境負荷に向き合うコンセプトが合致して採用となったようです。

今後の展開

その他、ヘルメットやマツダCX-5などへも採用されるなど、今後も多くの部材での実績につながっていく可能性があります。

三菱ケミカルグループによる強力な開発力によりバイオ由来では難しかったエンプラの原料開発を実現させました。

さらにその販売力によって、大手メーカーの部材として採用され、注目を集めています。

100%天然原料ではないところが、まだ課題だと思いますが、ある意味自然界にはない条件下でも対応できる性能を有するプラスチックを自然界の原料に求めていることから、難問であることは間違いありません。

ただ、前回の記事に記載したように、生物の力をさらに変化させることで新しい物質生産が今後も活性化し、生物的な製造が確立していく可能性は十分に考えられます。