こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。
ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
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国産羊毛の有効利用を目的に活動する「ジャパンウールプロジェクト」というものがあるそうです。
戦時中は軍服用に国産の羊毛が用いられていたそうなのですが、その後産業としては廃れてしまい、
今は、主に北海道・東北・信越・北関東の限られた地域で羊が飼育されているものの、羊肉としての利用がほとんどのようです。
というわけで私はあまり羊のことを知りません。そのため羊毛製造用語もチンプンカンプンです。
羊毛について調べるほど、日本でウールを広めるのはなかなか難しそうな印象を受けつつ、以前、リネンの記事でも紹介しましたが、羊毛ならではの風合いは何にも代えがたく、なんとか自国でも広めたいと思ってしまうのも無理はないとも思いました。
今回は、「ジャパンウールプロジェクト」の取り組みの一環として、日本で羊毛用に飼育されている羊の種類とそれらを糸にするまでの工程について、ご紹介します。
26牧場から集まった5.7tもの羊毛原料
国産の羊毛産業復活の試みは、4年前から極少人数の有志で始まったそうで、徐々に賛同者が増え、今年は26牧場が参加して、刈り取られた羊毛(脂付き羊毛)5.7tが国内の毛織物産業のメッカである愛知県一宮市に集まったそうです。
ここでスカーティングという工程を経て、ゴミや汚れて使えない毛を取り除き、3tほどの紡績用羊毛を採るとのことです。

歩留まり約50%….結構低いですね。使えないものは肥料などに利用されるようです。
スカーティングが終わった羊毛のことをFleece(フリース)と呼び、毎年コンクールも行っているようです。
フリースってユニクロの製品でもありましたが、これはポリエステル起毛の合成繊維のことを指し、これは羊毛のフリースに似ているから名付けられているんですね。へぇ。
羊の種類と毛の風合い
今回持ち込まれた羊毛は、サフォーク種が45%で、次いでポールドーセット種21%、サウスダウン種11%、コリデール種6%、フライスランド種1%だったそうです。
全然わからないので調べてみました。
サフォーク種…あっ…これは

イギリスが原産らしいのですが、主に肉用です。北海道でもジンギスカン用の羊として飼育されているようです。知らなかった…。ショーンは肉用に飼育されていたのかもしれない…。
毛も利用できるのであれば利用した方が良いですが、毛の品質はややゴワゴワしているそうです。
ボールドーセット種…あらかわいい。

オーストラリアで開発された羊です。他のウールに比べ、しなやかな弾力性があり、ダウンウールと呼ばれているようです。一頭から刈り取られる羊毛が少ないため貴重な毛のようです。
サウスダウン種

イギリス原産の羊とのこと。これも肉用としての羊ですが、毛の品質も良いそうです。
コリデール種…..ちょっと区別がつかなくなってきました。

ニュージーランド産 これは肉用の羊とウールの王様である「メリノ種」をかけ合わせて開発された種らしいのですが、肉用としても羊毛用としても利用されているとのことです。
最後はフライスランド種…

ドイツ原産の羊で、乳羊だそうです。毛は少なそうですが、全体の1%程度ということは、本来は乳用としての利用が主であるが、毛も利用してみようという流れでしょうか?
SPIN HOUSE PONTA.というHPに、前年のコンクール結果が出ているので、少し引用させていただきますが、フリースというのはこんな具合なんですね…。
毛質とか、原価が書かれています。1㎏あたり5,000~6,000円ほどしていて結構高いです。

国産羊毛製品の今後を予測する
日本羊毛産業協会のHPでは、羊毛業界のベンチマークであるオーストラリア羊毛取引所(AWEX)の東部市場価格指標(EMI)として12-14豪ドル/kg(1豪ドル=94.77円(2022年7月26日))との記載があり、1,200~1300円/kg程度なので、4~5倍の価格です。
このHPにスーツ一着に対して羊毛が約1.5kg必要との試算が記載されています。
そうすると、国産羊毛100%ウールでできたスーツ1着は原料だけで7,500~9,000円ほどになるという計算になります。
今回、集められた3tの羊毛をすべてスーツにすると2000着分になりますが….この価格だと、まだまだかなり高価なので、国産であるというだけでは普及は難しそうです。
ただ、先ほど挙げた種類の羊から得られた毛は、羊毛の代表種であるメリノ種にはないオリジナリティーがあるようで、「繊度の幅が広い」ということでした。
「繊度」というのは、糸の太さを表す単位の総称らしく、毛の断面が円形ではなく不定形な天然繊維は、番手と呼ばれる単位を使い、メートル÷グラム=毛番手という式で規定しています。
(つまり重さが1kgで長さが1kmある糸を1番手となります)
つまり色々な太さの糸にすることができるという意味でしょうか。
今回は、「紡毛だけでなく、28番手双糸などの梳毛向けに挑戦する」と記載されています。
より繊細な生地を目指して、用途を広げる
紡毛というのは、羊毛の特性をそのまま生かした糸で、太く、太さも均一でなく、毛羽立っているため保温性が高く、温かみのある、厚手の生地になります。
具体的にはフランネルとツイードという生地があります。


一方、今回目指す梳毛とは、繊維を何度も梳いて、短い繊維を取り除き、一方向に揃えた糸です。リネンの糸を作る際にも同様の工程がありました。
この梳毛で織られた生地は光沢があり、薄くて滑らかで、現在ほとんどのスーツ地に用いられています。
具体的にはトロピカルやポーラという生地があります。


確かに後者のスーツだとオールシーズン着用できる衣服に広く使えます。
羊毛も生地にするにはかなりの手間がかかりますが、何でも輸入に頼っている現代、原料の自給を少しでも考えてみることは必要かもしれません。