リネンが急騰 ~あらためてその作り方を調べてみました~

繊維

こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。

ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
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元記事はこちらです。リネンの価格が高騰しているのだそうです。良質なリネンを生産するフランスでの原料の不作が原因ということです。

リネンというと、私はシーツやまくらカバーに使っています。さらさらしていてべたつかず、沖縄の湿気の高い日々にも快適に眠れます。

そもそもリネンって何でしょうか? 知らなかったので調べてみました。

しかし調べるうちにいつも通り、興味対象はモノづくりへと移り変わっていきます….。

どうやら私の興味は何かモノを見たときに
 
・なぜそれが必要なのか
・どんな原理を利用しているのか
・どうやって作るのか

の3つの点が気になって仕方がないようです。

麻の仲間3種類はそれぞれ形態が全く異なっていた

リネンというのは布の種類のことですが、原料は亜麻と呼ばれる植物から作られています。

一般的に繊維としての麻は 麻(ヘンプ)、苧麻(ラミー)、亜麻(リネン)の3種類だそうで、日本の規格では後者2つの植物から得られた繊維を「麻」というそうです。

同じ麻が付くこの3種類の植物は、形態的には全く異なっています。


温暖な気候の地域に分布
苧麻
主にアジア~東アジアに分布
亜麻
冷涼な気候の地域に分布

ぞれぞれアサ科、イラクサ科、アマ科ということで、植物の分類としては異なっていても、産業上得られる布が同じような風合いだからという理由で、麻という文字が当てられている….これは面白いですね。

植物から糸を作るということ

これらは茎から繊維を得るため「靭皮(じんぴ)繊維」と呼ばれています。
(ちなみにサイザル麻など葉脈からとる「葉脈繊維」というものもあるそうです)

これらの植物から繊維をとること自体が、想像がしにくいのですが、繊維の製造方法は国内外のサイトで調べると収穫から糸にするまでが詳細に説明されています。

しかし、見る限り大変な作業なんだなと思いました….。

人類は裸でいるのが恥ずかしいので、何かで体を覆おうとしていて、最初は葉っぱか蔓か何かでなんとかしていたのかもしれませんが、そのうち特定の植物が良質な繊維を持っていることに気が付いて、そこから糸を作って、布にしていくんですから、すごいですね。

糸が細いほど、得られる布はしなやかで薄くて軽いでしょう。
繊維表面の特性によって、光沢など特有の風合いが異なるため、人間は色々な繊維を探索してきたのだと思います。

最終的に現代の人口を支えるほどの生産能力も確保できる植物資源として残ったのが、綿とか麻だったのかなと感慨深く思いました。

というわけで、今回は亜麻を題材として糸になるまでを調べました。

亜麻から繊維をとる

この繊細な植物は収穫方法からして、面白いのですが、刈り取るのではなく、引き抜くんだそうです。

理由が明確になっている資料は見つかりませんでしたが、背の低い雑草が一緒に混ざらないようにするため、繊維の長さを稼ぐため、根本で束ねやすくなるため、などが考えられます。

これらを水に漬けて、外側の外皮を柔らかくしてから、腐らせて、その後繊維を叩いて外皮を取り除くと内側の靭皮繊維が露出してきます。

これらをくしで削っていくと、繊維はだんだん細くなっていきます。得られた繊維はフラックスと呼ぶそうです。

ガシガシ叩いて外皮を取り除く
靭皮繊維を梳いて細さと滑らかさを得る
これがリネンの原料、フラックス



ここで、亜麻色の髪の少女が、どんな色の髪をしていたのか納得しました。要するにこれは金髪だ….。私はもっと茶色い色を想像していましたが、そうではないんですね。

繊維をつむいで糸にする

ところで、化学繊維は、熱で溶かした高分子粘調液を飴のように引き伸ばしながら冷却するという手法で糸を作るので、イメージがしやすいのですが、天然繊維はどうやって糸にしているんだろう…。

天然の繊維は長さが限られるので、長くて細い糸を作ろうと思うと、つなぎ合わせなくてはなりません。

その作業を紡績と呼びます。(ちなみに製糸、紡糸、紡績はそれぞれ意味が異なり、製糸は繭から絹糸を作ること、紡糸は化学繊維から糸にすること、紡績が短い天然繊維をより合わせて糸にすることを指します)

つなぎ合わせるために、繊維の束を少しずつとって、それらをねじりながら絡ませて、かつ引っ張りながら長くしていく….と糸ができます。

なんだかヘタクソな人(自分)がやったら、太かったり細かったりする糸になりそうですね。

リネンの魅力

リネンの繊維にはペクチン(ペクチンというのはゲル化剤としてジャムにも入っていますが、主に植物の組織をつなぎとめている接着剤のような多糖類です)という物質が存在し、これが毛羽立ちを押さえ、滑らかさを与えているようです。

天然の素材から糸を採り、それを織って布にする作業は工程が多く、かなりの手間がかかりますね。

しかし、化学繊維では得難い独特の風合いを出すことができ、産業としてなくなって欲しくないなという思いが強まりました。