こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。
ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
是非、私と一緒に、「あなたが本当に着ていて自信の持てるコーディネート」を探してみませんか?
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ISSEY MIYAKEのデザイナーも務めた高橋悠介さんが、2020年に自身のブランド「CFCL」を立ち上げました。
CFCLは、Clothing For Contemporary Life(現代生活のための衣服)という意味だそうです。
「instocial by 美術手帖」というpodcastで初めて知りました。
そのときに話していた3Dコンピューター・ニッティングというものに興味を持ちました。
また、その技術で作ったPOTTERY DRESS (陶器のドレス)をとても素敵に着こなしていらっしゃる方をオンラインサロンの服装心理lab.で知って、ますます興味が出てきました。
縫製を一切しないで作るこのニットは、一枚一枚完成した状態で製造されます。
またそのデザインは精密にプログラミングされているそうです。
これさえあれば、自分の体型にぴったりのオートクチュールを格安かつ数分でオーダーできるのではないかと思いました。
また、再生ポリエステルを用いて真摯に環境問題に向き合うCFCLの姿勢を知ることができました。
3Dコンピューター・ニッティング技術を有する島精機製作所
CFCLを語る前にこのようなデザインを可能にした技術の方を先に語る必要がありますよね。
これは島精機製作所のコンピュータ横編機とデザインシステムで実現しています。
もともとは手袋を自動で編むための編み機を製造していたそうなのですが、手袋を逆さにすると….手首のところから頭を出せば、なんだかセーターのような形ですね…
そんなアイディアから無縫製で洋服を作ることのできる「ホールガーメント®」という技術を開発しました。
この技術を使うと、シンプルなセータであれば1枚当たり約30分で編みあがるそうです。
まるでセーター製造機のようです。
したがって、型紙からパーツを切り出す必要がないため、生地のロスがありません。
また縫製が必要なく、製造のリードタイム、人件費などを大幅にカットできます。

また、CFCL以外にもユニクロなど多くのブランドがこの技術を採用しています。
その理由は、立体的なデザインを支えるシステム/ソフトウェアが充実しているため、これまでは編むのが難しかった繊細なデザインもプログラミングで簡単に実現できることにあるようです。
これらを総称して3Dコンピューター・ニッティング技術という表現が使われています。
ユニクロにも3Dニットというカテゴリがありますが、それはこの技術を用いています。
そういえば、私もユニクロの縫い目のないタートルネックを持っていますが、それで作ったのかもしれません。


CFCLのデザイン性とコンセプト
近未来的なデザイン
podcastを聴いてからすぐにHPでこのPOTTERY DRESSを見ました。
結構近未来的なデザインだな..と思うのですが、着てみると結構体にしっくりなじむようです。
特に私は、服装心理lab.というオンラインサロンで、このKID用の写真の左側のデザインのドレスを着た方のお写真を拝見したのですが、袖口と裾のシックなストライプが体のシルエットに馴染んでいて、とっても素敵でした。
思わず、触り心地なども聞いてみたのですが、見た目よりも軽くてサラサラしていて、着心地はとても良いとのことでした。



環境問題に真摯に向き合う強いコンセプト
さらにCFCLは先の記事でも紹介しましたが、再生ポリエステルを用いています。
また日本のファッション・アパレル業界では初となるLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施しています。
LCAは、製品を作るところから捨てるまでにどのぐらいの環境影響があるかをCO2排気量で評価するものですが、ぼんやりと環境にやさしいというのではなく数値化して示すことは重要だと思います。
それによるとこの象徴的なPOTTERY DRESS一着(約540g)は500ml容ペットボトル18本分の再生ポリエステルが使われており、LCAで試算したCO2排出量は4.99㎏だそうです。
CFCLのHPには、再生ポリエステルを使うことで、石油由来のポリエステル糸で生産した場合に比べ、およそ約50%程度のCO2が削減されると書かれています。
さらに「衣類を対象にしたCO2及び水のインベントリ分析」東京都市大学 環境情報学部 環境情報学科 伊坪徳宏研究室の資料から、綿のTシャツ1枚(150g)で、3.4kgとし、POTTERY DRESS1着と同等の重量に換算すると10kg以上になるため、これが環境に配慮されたアイテムであることを強調しています。
ちなみに、「衣類におけるライフサイクルアセスメントの現状と課題」廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 3, pp. 148 -156, 2010によると、ウール50%とポリエステル50%のジャケット(522g)が約6.0kg、綿100%のワンピース(494g)が約2.0kgとやや古い文献だからか、低い値が出ています。
もしこの値を採用すると、そこまでのLCAメリットがあるかどうかはわかりません。
ただし、LCAについてはあくまでも指標であるため、色々な考え方が今も検討されつつあります。
ここで重要なのは従来技術との比較ではありません。

CFCLの素晴らしい点は、これを宣伝材料だけにとどめず、自身のブランドでアパレル業界初のゼロエミッションを実現したいという強い思いを具体的に数値目標で打ち出している点です。
それは毎年アップデートされるレポートを見るとよくわかります。

先の数値をベンチマークとして、どこを効率化すれば、さらにこの数値を引き下げることができるのか真剣に考えているのです。
そのため、翌年には上のグラフのようにPOTTERY DRESS以外のアイテムも同様にLCAを評価して公表し、数値の差がどうして生じたのかなどの考察が書かれています。
(上のグラフを見る限り、KID DRESSが最も小さく、COATが最も大きいことから単純に服の重さ(用いた糸の重量)によるところが大きそうです)。
また、国内製造にすることで輸送の面から効率化させること、また、現時点では石油由来の繊維が12~14%含まれているため、2030年までに再生繊維100%の衣服の製作を目標としていることを公表しています。
日本における温室効果ガス排出の「実質ゼロ」達成目標に向けて明確に数的評価をしていることが素晴らしいのです。
ちょっと高くて気軽に買える値段ではないのですが、ここまで正直に服作りをしているブランドであれば私も一度買ってみたいなと心から思いました。