こんにちは! 理系スタイリストのNAGです。
ファッションの正解は人それぞれ。
でもそれは科学(客観的データ)×心理(個人的嗜好性)で説明できます。
是非、私と一緒に、「あなたが本当に着ていて自信の持てるコーディネート」を探してみませんか?
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先日、渋谷のスクランブルスクエアでこんなものを見ました。

これはマッシュルームレザーというもので、きのこ(菌糸)からできたレザーだそうです。
触らせてもらったら、指に吸い付くようなしっとり感….。
すでに有名ブランドではこれを用いたアイテムも出しているそうです。
このような動物の皮革ではないレザーのことを総称して「ヴィーガンレザー」「エコレザー」「バイオレザー」などと呼ぶそうです。
果たしてこれはエコといえるのでしょうか?
ヴィーガンレザーは、他にも色々ありました
今回見たのはMylo™ という製品でした。
まだ販売はされておらず、こちらのミニパースを触らせてもらいました。
ひんやりとしていながら適度な水分を含んだしっとり感に有機的な印象を強く感じました。

ざっと調べたところ、以下のようなレザーが世に出ています。
スタートアップ企業がクラウドファンディングなどを通じて資金調達して実現した製品もあるようです。
全部味があって素敵です。
特にこのMylo™に関しては、開発元であるBolt ThreadsのWebサイトには壮観な培養室の写真が掲載されています。残念ながらキノコの種類は明確になっておらず、マッシュルームということになっていますが、白くてフワフワの菌糸が棚からはみ出さんばかりに生育しているのがわかります。

私も担子菌(キノコ)を取り扱ったことがあります。
確かにシャーレいっぱいに生えたモフモフの菌糸体はきめの細かい毛布のようで美しかったことを思い出します。
ただ美しいと眺めているのではなく、レザーにしてみようと考えるか考えないか、そして本気でやってみるか無理だとあきらめるかが、凡人と天才の違いということでしょうか(汗)。
原料 | 製品名 | 開発所在地 | コラボレーション |
タバコウロコタケ科 | Mylea™ | インドネシア | ダブレット |
キノコ(科は不明) | Mylo™ | アメリカ | ステラマッカートニー、アディダス、メルセデスベンツ他 |
マンネンタケ科(霊芝 | Reichi™ | アメリカ | エルメス |
リンゴ廃棄物 | Leap™, Apple Skin™他 | デンマーク、イタリア他 | LOVST TOKYO |
パイナップル葉 | piñatex | ロンドン | シャネル、H&M他 |
サボテン | Desserto | メキシコ | BMW、H&M、アディダス、ジバンシィ他 |
果物廃棄物 | Fruitleather | オランダ | |
トウモロコシ廃棄物 | Viridis® | イタリア |
本当にエコと言って良いでしょうか
このようなヴィーガンレザーは本当に環境にやさしいのでしょうか?
これらの製品を紹介している記事はいずれも、
・動物の犠牲が減らせる
・動物が生育するまでの膨大な水や飼料が不要である
・皮なめしに用いる各種薬剤を使用する必要がなくなる
・人工皮革に比べて石油由来原料や合成に係るエネルギー、排水による環境負荷が小さい
などをメリットとして挙げています。
しかし、なにも皮革を取るためだけに動物を飼育したり屠殺しているのではありません。
食料として利用した後に皮革として利用している場合が多々あります。
そうなると天然皮革が一概に悪いともいえないように思います。
また、製造工程にも何らかの化学物質や石油原料が使われていると考えられ、ゼロというわけではないと思います。そう考えると、トータルで考えたときに気休め程度のメリットしかないという懸念もあります。
ちょっとネガティブなことを書いてしまいました…。
ただ、いずれの製品も増え続けるゴミ問題や石油枯渇、水質悪化、温暖化などに対して何らかの抑制効果を期待して開発されていることは間違いありません。
総合的に判断すると技術力ではマッシュルームレザーに軍配があがりそう
私は先に挙げた製品の中では、マッシュルームレザーが非常に興味深い素材であると思います。
マッシュルームレザーは菌糸が複雑に絡み合うことで強靭なシートが形成されているため、菌糸の生育スピードや配向性、範囲を制御することで今後色々な技術への応用が期待できます。
一方、他の製品はバイオマスがほぼ増量剤的に使用され、これを樹脂で固めてシート状に成型しているため、比較的簡単に製造可能なのではないかと思いました。
ただし「エコ」という視点からは、たとえマッシュルームレザーが石油原料を含んでいなかったとしても一番優れているとは限りません。
なぜなら、菌を培養する培地、3週間もの生育に係る冷暖房費、加工に係る特殊な設備などをトータルで考えて、この原料が既存技術と比べて本当に「エコ」かどうかを比較しなくては環境にやさしいと簡単にいえないからです。
むしろ製造のしやすさ、材料の入手可能性などから考えると、他のレザーの方が「エコ」であるかもしれません。
環境にやさしいという言葉の重み
今回は街で偶然見かけた新素材、マッシュルームレザーmylo™をきっかけにヴィーガンレザーを紹介しました。
表を見る限り、どの製品もハイブランドやスポーツブランド、自動車メーカーなどがいち早く注目し、アイコン的な製品が多くお披露目されています。また一部はすでに販売されています。



真価が試されるのはここからです。
それには私たちが少々価格が高くとも、それらの製品に興味をもって、手に取ることが重要であり、それによって価格が下がり、環境への良い影響につながっていく可能性があります。